ミャンマーでの水泳事情

<ウェスタン・パークロイヤル・レストランにあるプール>

 ヤンゴンでの生活での1つの課題は健康の維持にある。日本では約25年マラソンを続けてきたが、ヤンゴンでマラソンを継続するための環境が整っているとは言い難い。そこで水泳に着目し、プール探しを試みた。1年前にヤンゴンを訪れた際に宿泊したセドナホテルには立派なプールがあり、早朝に泳いだことはあるが、もっと身近に利用できるプールはないものかと探した結果最初に見つけたプールがカンドージ湖公園内の「ウエスタン・パークロイアルヤル・レストラン」のプールであった。ヤンゴンでの駐在開始直後に列車の旅をした際に探し当て、汗だくになっていた身体をプールの水に浸すことが出来た。然し水遊びを楽しむ子供達が多く、残念ながら落ち着いて泳げる環境ではなかったため、1回きりの利用となった。

<ヤンゴン大学の50mプール>

<メンバーカード>

<プールの脇にあるジム>

 次に探し当てたのがヤンゴン大学のプールである。コンドミニアムのオーナーがヤンゴン大学出身とあって、プールの話をすると、早速車で現場まで案内してくれてメンバーカード作成までサポートしてくれた。本格的な50mプールで年会費は約5,000円と非常に安い。因みに、あすな会計の中山さんは、通っているスポーツジムに月額1万円の会費を払っているとのことからも、ヤンゴン大のプールの安さは際立っている。

<プール脇にあるジムにて、ウォーミングアップ>

 メンバーになった週の日曜日の朝、コンドから徒歩15分のヤンゴン大プールに出かけた。利用者も少なく、コースに沿って50mを縦に泳ぐスペースは充分あった。然し泳ぎ始めてすぐに感じたのは水質の悪さである。透明度が低く、コースに沿ってプールの底に引かれている青い線が良く見えないし、ゴールに近づいても壁が見えてこない程水が濁っているのだ。コースラインを示すブイも浮かんでないため、まっすぐ泳ぐのが難しい。「水は定期的に入れ替えるべきだ。」、「コースラインを張らないのか?」「水質は大丈夫か?」等など、プールの管理人にあれこれ注文を付けたが、埒があかない。まわりの日本人駐在員に状況を話すと、「そんなプールで泳いでいると、いつどんな病に侵されるか判らないから止めた方がいい。」との反応が返って来るばかり。確かに病気になれば、健康維持の筈の水泳が不健康を引き起こす原因となってしまう。
 色々迷ったが、そのプールでは、少ないながらも現地の子供や若者達がゴーグルもつけないで平気で水遊びをしたり、泳ぎの練習をしたりしていて、病気になった人の話も聞こえてこない。と言う訳で、毎週日曜日の午前中は多少の不満と不安を抱きつつヤンゴン大学のプールで泳いでいる次第である。

 そんなある日、日本語研修生との会話の中で、Kyaw Thet Khine君が「水のきれいなプールがあるので、一緒に行きましょう。」と誘ってくれた。彼の友人であるThoo Phae Aung君、Moe Lin Aung君の2人も加わり、27日(土)の研修が終了した午後4時過ぎからKyaw Thet Khine君の車に便乗して彼がメンバーになっているKOKINEクラブに向かった。1904年設立という由緒正しきメンバークラブは、50m及び30mの2つのプールの他、ジムやレストランも備わっている立派な施設であった。外国人には会員資格を与えないとのことで、ビジターで入場した。ビジターフィーは500円であった。早速水着に着替え、ジムの器具を使って準備運動を行った上で、水泳を楽しんだ。

<緊張し、プールサイドから手が離せない>

<リラックスすればからだは自然に浮かぶ>

 研修生3人の内、クラブの会員Kyaw Thet Khine君以外は泳ぎが得意ではなく、特にThoo Phae Aung君は全くの金槌であった。そこで、基本中の基本である「水に対する恐怖心を取り除く」訓練から始めた。これは自己流で始めたものだが、フィリピン人の小学生に適用した際、効果抜群だったと言う訓練方法である。
 水への恐怖心から、コチコチに固まっている身体から力を抜き去ることで、水に浮かぶ自分に気付き、次第に泳ぐことに自信を付けていく姿を確認することが出来た。本人も水に浮かぶ自分に喜びを感じたようである。チョットショックだったのは、生徒のミャンマー人より自分の方がはるかに色黒だったことである。

<Khine君の得意の泳ぎは自由形>

<夕やみ迫るプールサイドで>

 泳げるミャンマー人は極めて少ない。そもそも学校にはプールが無く、川も泳げるほどきれいではないことから、子供の頃から水に触れる機会に恵まれないため、泳げる人が少ないのは当然と言える。水泳というスポーツはごく一部のエリート層とその子息だけに与えられた特権なのかもしれない。ヤンゴン駐在中に、少しでも多くの子供達が泳げるようになれるよう指導しようと感じた次第である。


2014年9月28日(日)
MyanmarDRK Co., Ltd. Managing Director
宮崎 敦夫