結婚式に招かれて-その2

 最初に招かれた結婚式の会場は5つ星ホテルのボールルームであったが、次に招待された結婚式の会場は僧院であった。以前幼い子供の得度式で僧院を訪れたことがあったが、僧院での結婚式への参加は初めての経験である。僧院は様々な建物が建っているが、在家の人達が集う建屋は1階が披露宴会場、2階が儀式を行う大広間と、様式が決まっているようだ。2階にも食事用のテーブルが並んでいるが、それは僧侶達に振舞われる食事のようだ。披露宴会場が椅子式であるのに対し、2階が座敷と言う組合せも面白い。

<1階の披露宴会場>

<2階の披露宴会場>

 9時から2階の結婚式場で厳粛な結婚式が執り行われた。正面に設えられた仏陀と弟子たちの塑像の飾られた祭壇の前に式を執り行う僧侶の椅子が置かれ、その前に新郎新婦を中心に親戚一同が横一列に並んで座る。そして招待客はその後ろの適当な場所に座る。但し、招待状には10時から始まる披露宴の事しか書かれていないので、招待客はまばらである。

<祭壇の前に並ぶ親族一同>

<全員が揃ったところで僧が席に着く>

 やがて僧侶が良く通る太い声で読教を始める。親戚一同は合掌しながら読教を聞く。日本と違ってミャンマーでの僧侶の読教は意味不明な呪文ではなく、ごく身近な日常の言葉で綴られているようで、全員で唱和するタイミングになると、全員が口を揃えて唱和する。
全員による唱和が終わると、再び僧侶による読教が始まり、新郎新婦及び両親が配られてきた金属製の急須を持ち上げ、金属製のカップに水を注ぐ。しばらく続く読教に合わせて水を注ぐので、注ぐと言うより少しずつ水を垂らすと言った表現の方が当たっている。
 それが終わると、新郎新婦の共同作業として2人が揃って僧侶に捧げものをする。

<説教を聞きながら一心に祈る>

<金属製の急須から水を注ぐ>

 読教が終わったところで、僧侶始め全員が席を立ち、僧侶の席の脇に準備されている食事の丸テーブルを取り囲む。そして全員でテーブルを10cm程持ち上げる。意味はよく判らないが、一体感を示す行為のようにも思える。

<食事用テーブルの前に座る>

<全員でテーブルを持ち上げる>

 これで約1時間かけた結婚式が無事終了したことになる。この頃には1階の披露宴会場には三々五々招待客が集まり、知人同士で丸テーブルにつくと、早速食事が運ばれてくる。食事が運ばれてきたテーブルから逐次宴会が始まる。到着した人達に食事を振る舞い、終わればさっさと引き上げて貰う。引き上げて貰わないと、席が足りないからだ。ミャンマーは敬虔な仏教国であることから、当然の如く禁酒であり、酒宴にはなり得ない。専らお皿に盛りつけられたたっぷりの白米にお采を載せてスプーンで口に運ぶ。僧院の披露宴会場はホテル以上に自由で、司会者も不在、席に着けば、ありふれた食事が配膳され、食事が終われば、さっさと帰っていくのが流儀である。多くのテーブルに招待客が座り、食事が進み始めた頃には新郎新婦が2階から降りてきて、各テーブルを回りながら挨拶をする。そうした中、新郎新婦の母親が大活躍をする。食事が終わって帰ろうとする招待客に対し、新郎新婦の挨拶が終わったかどうかを確認し、まだであった場合には、少し待って貰って、新郎新婦を引っぱってきて招待客に挨拶をさせ、記念撮影を進めたりするのである。そのように走り回る母親の表情は喜びにあふれているようであった。

<披露宴会場の食事>

<三々五々集まった招待客>

<新郎新婦を囲んで記念撮影>

 2階での結婚式と1階での披露宴が、全く別次元の催し物として進行するところに僧院での結婚式の特徴が出ているようである。日本でも挙式と披露宴とは別物で、挙式には仲人等限られた人と親族のみが参加し、披露宴の席において司会者より挙式が滞りなく執り行われたことを報告する段取りであるが、ミャンマーでは、結婚式の報告等一切なく、参加者同士の連携もない。式は式、披露宴は披露宴、参加者は適当に参加し、適当に帰るという完全に切れた関係で、新郎新婦対招待客と言う極めてルーズな関係を保ったままの挙式であった。


2015年12月27日(日)
MyanmarDRK Co., Ltd. Managing Director
宮崎 敦夫