ミャンマーは1年が大きく雨季と乾季とに分かれるが、5月から約半年間続く雨期には殆ど毎日のように雨が降り、数日降り続くことも珍しくない。そうなるとあちこちの道路は冠水し殆ど唯一と言ってもいい車による流通網は各所で分断され、社会経済活動が大きな打撃を受ける。一方11月から始まる乾季になると、連日青空が続き、雨が降ることは殆どなく、舗装されていない道路から舞い上がる土埃は街路樹の緑の葉を茶色に染め、ビルの外壁を埃っぽくするだけでなく、ビルの中のエレベータホール、階段、窓枠から家の中にまで侵入し、家具類までも薄汚れてしまう。
掃除を得意としないせいか、汚れに無頓着な国民性の故かは定かではないが、ミャンマーの人達は、そうした汚れをものともせず、平然としかも明日に向かって力強く生きているようである。
眩しかった太陽が西に傾き、夕闇が迫って来る黄昏時になると、埃っぽい街の汚れは目立たなくなり、それに代わっていつしか赤く染まった太陽が大空に見事な作品を描き始める。雲の厚さ、土埃の濃度、雲の流れ等などの微妙な変化を余すところなく活用して、連日新たな作品を創造し続ける。
ターナー、モネ、ピサロ等の夕陽の光景を描いた作品が頭の中で重なる。これら一連の夕焼け空の風景は全て会社の窓からの眺めである。
思うように進展しないビジネスの明日を憂いながら気持ちが自然に重く沈み込んでしまう時であっても、夕方5時半頃から約1時間弱に渡って自然の芸術家が創造する壮大な作品を眺めていると、人間の営みによって生じる悩みが、取るに足らない些細なものであること気付かせてくれる。
ただ、会社のビルの道路を挟んだ西側の対面では現在大きなコンドミニアムの建設が進んでいる。これが我が社の位置する6階を超えて更に上に向かって伸びて行くと、この見事な自然の芸術作品を眺めることが難しくなる訳で、極めて残念なことである。然し、幸いなことにここはヤンゴンの中心地。計画通りにプロジェクトが進んで行かないミャンマーである。建設工事は想定通り遅れ遅れで進行し、新しく生まれるコンドミニアムに視界を遮られてしまうまでにはまだ数年かかるだろうと密かに期待している。
2015年2月8日(日)
MyanmarDRK Co., Ltd. Managing Director
宮崎 敦夫